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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens
不埒千万――だって言やがる」
「投げられたのか」
「ヘエ――十手を出す暇もありゃしません。いきなり一本背負に、欄干を越してドブンとやられたには驚きましたよ」
「危ないね」
「親分の前だが、永代の下の水は、思いのほか塩っぱい」
「馬鹿野郎」
そう言いながらも、寒空にガタガタ顫えている八五郎の着物を脱がせ、皆んなから一枚ずつ剥いで、どうやらこうやら暖めた上、倉賀屋から布団を借出して来て、階子の下の六畳に寝かしました。
「風邪を引きそうだぜ、親分」
「今熱燗で一本やるから、それを呑んで寝てしまえ。俺はこれから八丁堀へ行って、明日の朝迎いに来る」
「少し淋しいね、親分」
「何を、子供じゃあるまいし」
平次は多勢の手伝いを皆んな帰した上、八五郎一人を留守番にして、そこから遠くない八丁堀組屋敷へ急ぎました。
与力笹野新三郎に逢って、
「旦那、この日付と数に、お心付きはございませんか」
虚無僧が手形と言って置いて行った紙片を見せました。笹野新三郎しばらく眺めておりましたが、
「平次、これはどこから手に入れた」
膝の上に置いて容易ならぬ眼を挙げます。
「虚無僧が置いて行きました。もっとも私を仲間と間違えたようで」