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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens
「大丈夫ですか、いきなり怒鳴りゃしませんか」
八五郎はあの失敗以来、すっかり御無沙汰して、この家の敷居が跨ぎ切れないような心持だったのです。
「八か、大丈夫だ。噛付きはしないから、入って来い」
奥から思ったよりも晴々しい平次の声。
「ヘエ――」
ガラッ八は恐る恐る小腰を屈めて、髷節ばかり障子の中へ入れました。
「なんて恰好だい。まア入れ、八」
「ヘエ――、もう怒っちゃいませんか、親分」
「縮尻はお互だよ。――ところで八、今日は何日だっけ?」
「正月の十日ですよ、早いもので」
「年寄り染みた事を言うな。――その十日に来たのはお前の運がなかったんだ、これを見てくれ」
「ヘエ――」
ガラッ八は恐る恐る滑り込みました。平次は畳の上へ置いた半紙へ、変哲なものを書いて一生懸命それと睨めっこをしているのです。
「これは何だと思う、八」
「橋の欄干じゃありませんか。――あッ、あのお年玉の手拭の模様を書いたんで? 親分ですかえ、これは、うめえもんだね」
「お世辞を言っちゃいけねえ。――手拭は虚無僧にやってしまったが、心覚えがあるから、あの模様の一番初めのを書いてみたんだ」
「ヘエ――」
「ところで。