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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens
「房五郎は浅草に居た、――これは新吉よりももっと多勢の人が証人になっている」
「定吉は竹田人形の小屋の中に居た、――お仙は嘘を吐くはずはない」
これで事件はハタと壁に突き当ってしまいました。
「とにかく、明神様まで行ってみるとしよう」
平次と喜三郎とガラッ八は立上がりました。事件が容易に目鼻が付きそうもないので、与力の笹野新三郎は、とうに八丁堀へ引揚げてしまったのです。
「ここから明神様の境内まで、女の足で、四半刻足らずで行って来られるかどうか、一つ試してみるんだね」
八五郎は寒空に毛脛を出し駆け出しそうにしております。
「お仙が駆けたというのかい、――毛脛を出して」
と平次。
「へッ、正に一言もねえ」
無駄を言いながら明神様の境内に着いた時は、もう陽が落かけておりました。
裏へ廻って、その頃評判を取った竹田人形の木戸を入ると、寒い時分で、さすがに見物がチラリホラリと居るだけ、人形の生けるが如き姿態が、夕陽を受けて、無気味な艶めかしさで人に迫るのでした。
小屋を一と廻り。
「節分の晩はどうだったえ」
平次は小屋の者らしいのを捉まえて訊くと、
「あの晩は峠でしたよ、よく入ったもので」