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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens

Aozora Bunko

「フーム」

お滝は不思議なことを言い出しました。

「油屋兼吉さんが手違いで遅れたと知らずに、巡礼になった出雲屋さんが、真物の虚無僧――それも敵持でビクビクしているのか何かへ、いきなり敵名乗を揚げて、竹光でも何でも、ピカピカするので斬り付けたとしたら、どうなるでしょう?」

「…………」

「真物の虚無僧はお茶番とは知らないから、すっかり真に受けて、本当に返り討ちにする気で殺さないとは限らないでしょう――」

お滝の言うことは、いかにも理に詰みます。

「ありそうな筋だな」

平次は静かに応えました。

「真物の虚無僧で敵持だったら、今頃は大宮あたりまで逃げ延びていますよ。飛鳥山で腕組をしながらお月様を見たって、親分さん」

お滝の舌は次第に辛辣になります。

「だがな、お滝、――敵討騒ぎがあってから、一人も山から逃げ出した虚無僧はないんだぜ」

「天蓋を取って、袈裟を外して、笛を隠したら、虚無僧はどんな恰好になるでしょう」

「…………」

「そんな浪人者は、飛鳥山に二三十人いましたよ、親分」

平次はしかし頭を振りました。虚無僧が人を返り討ちにしたところで、姿を変えて逃出す必要があろうとは思われません。