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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens

Aozora Bunko

「もうようがすよ、親分」

ガラッ八は泳ぐような恰好で平次の皮肉を封じました。

「お品さんがせっかく頼んで来たじゃないか。ともかく、行ってみてやるがいい」

「行きますがね、親分、曲者の見当だけでも付かないと、捉まえようがありません。泉屋一家ばかりを狙うのはどうしたわけでしょう」

ガラッ八の疑問は、その頃の江戸中の人の疑問でした。

「それが判りゃわけはないよ。商売敵か、家督争いか、高利の奥印金に悩まされた御家人か――いずれそんなものだろう」

「ヘエ――」

「切半や役料を捌いて、細い口銭を取っただけじゃ、札差が千両株と言われる道理はねえ。あの豪勢な暮しの裏には、とんだ罪も作っているだろうじゃないか」

平次はそんなところまで見当を付けましたが、それ以上のことは素より解りません。

八五郎のガラッ八が、旅籠町の泉屋へ行ったのは、酉刻(午後六時)少し過ぎ。利助の子分は五六人、平右衛門町の隠居泉屋と、旅籠町の泉屋の本家に別れて、左右前後から目を配っておりました。

「よう、八五郎兄哥、お指図を頼むぜ」

誰やらが早くも見付けて嫌味を言うと、

「あ、いいとも」

臆れた色もなく、こう言って反身になる八五郎だったのです。