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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens
「おや、銭形の親分さん」
「大層精が出るんだね、宗太郎さん」
まだ卯刻半(七時)というのに、主人の宗太郎は、尻を端折って、雪を掃いていたのです。大跛者で不自由そうですが、それでも、金を貯める性の人によくある、労働を享楽する心持はよく呑込めます。
「表は小僧に掃かせましたが、どうも、ぞんざいでいけませんよ」
そういう言葉が、聞きようでは、弁解らしくも響きます。
「ところで、昨夜弟の宗次が来たろうか」
「ヘエ――、また何かやりましたか、ここへは顔を出しませんが。――もっとも、来たらうんと意見をしようと思っていますが、盗られた五十両が惜しいわけじゃありませんが、あれじゃ人の道が違います、ね、親分」
「そういったものだろうな、――ところで、宗次が立ち廻ったら、早速届けて貰いたいが、匿ったりすると、大変なことになるが――承知だろうな」
「ヘエ――」
「それじゃ頼みますよ」
「何かありましたんで、親分」
「なアに、大した事じゃない」
泉屋の隠居二人を殺した大事件を、――しかも、半刻経たないうちに知れるはずのことを、平次は教えようともせずに背を見せます。
そこから平右衛門町までは一と走り、平次が行き着いた時は、雪と碧血の中に、検死の役人と、石原の利助の姿と、泣きわめく泉屋一家の大混乱を見せられるばかりでした。