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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens
ない」
「…………」
平次の深沈たる顔を、利助は不安そうに眺めるばかりです。
「奉公人は二た月まえにみんな変えた、帳面の筆跡もその頃変っている、――風呂場は急拵えだが、不似合いに贄沢で、お姫様の風呂場のように、内から厳重に鍵が掛るようになっていた――刀箪笥には後家になった刀があって(同じ拵えの脇差は曲者が持っていた)風車は雨戸の外へ仕掛けて、夜風にクルクル廻ると、その柄を机の前へ持って来て、あの穴へ竹箸でも仕掛けると、風の吹く度に算盤の球をパチパチ弾かせることも出来る――」
恐ろしい疑惑に利助も顔を挙げました。
「宗太郎と宗次は、親も間違えるほど顔が似ていた。とすると、――あの宗太郎と名乗るのが、その実は弟の宗次かも知れない」
「跛足はどうする」
利助は相談すると、
「そうだ、あの跛は偽じゃない」
平次は愕然としました。
「とにかく帰ろう。こりゃ、大変な事になるかも知れない」
二人は花屋を飛出しました。一気に鳥越の笹屋へ――。
ガラリと格子を開けると、
「あッ、親分」
ガラッ八は元のまま八畳に脂下がっていたのです。
「宗太郎はどうした」
「親分方へ正伝寺と言ったが、あれは広徳寺の間違いだから、大急ぎで親分方に教えて来ると言って、半刻ばかり前に出かけましたよ」