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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens

Aozora Bunko

「有難え、親分、これであっしの顔も立つ」

ガラッ八が有頂天で飛出したことは言うまでもありません。

鎌倉町へ着いたのは、卯刻(六時)少し前、早起きの店は表戸を開けて、往来の掃除を始めた頃です。

「お早う」

「あ、銭形の親分さん」

源太郎の家の格子を洗わせていた若い男が、振り返って声を掛けました。

「精が出るねえ、捨吉兄哥」

平次は愛想よくこう受けました。大尻端折りで、二人の子分を指図しているのは、二十七八にはなるでしょうが、小柄で、意気で、四ツ五ツ若かったら、寺小姓のように綺麗だったでしょう。お小姓の捨吉とは、全くうまく付けた綽名だ、――と平次も感心させられたほどです。

「親分、よく御出で下さいました、徳がどんなに喜ぶでしょう」

捨吉は端折りをおろすと、男のくせに片靨を見せて、まだ閉め切ったままの奥へ入って行きました。

それから、顔を揃えるまでには四半刻(三十分)もかかりましたが、平次は寸刻も無駄にせずに、仕度の出来たのから順々に逢って行ったのです。

最初に出て来たのは、隠居の源太郎、これはもう七十を越した老人で、気ばかりは滅法若くとも、事件にはあまり関係がありそうにも思われません。