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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens
「ハハ、人間らしいのはあれ一人ですが、あれは八五郎と言うあっしの子分で、何を聞かせても心配のある人間じゃございません。馬だと思って、御遠慮なくおっしゃって下さい」
平次は気軽に笑いました。小笠原流に対抗して、五分も引けを取らぬ心持の準備だけは出来たのでしょう。
ガラッ八はプイと背を向けました、――馬だと思って――が少し気に入らなかった様子です。
「それでは申上げます、が、御存じの通り小堀家は御先祖遠江守政一様以来茶道の御家柄で、東照公様御封の遠州流奥伝の秘書と、江州小室一万二千石永代安堵の御墨付を、二つの家宝といたしております」
「…………」
物々しい前置き、平次もガラッ八も固唾を呑みました。
「その二つの家宝が、一と月ほど前から紛失いたしました」
「一と月前?」
「左様でございます、お部屋様お銀の方が、御里へお越し遊ばされた頃に当ります」
お銀が疑わしいと言わぬばかり、屹と挙げた顔には端然として、感情の動きもありませんが、腹の中はもうそれに決めているような口吻です。
「どこへ置かれたのでしょう?」
と平次。
「殿のお側の御手文庫に入れてあったはずでございます」