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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens
町人にしては贅沢過ぎると思うほどの絹夜具の中に、横たわっているのは、河内屋の秘蔵孫、喜太郎少年の痛々しい姿です。
男人形のように可愛らしい眼鼻立も、老主人の又兵衛には未練だったでしょう。
額に触ってみると、ヒヤリとする冷たさ。
「傷は一つもありませんが、親分」
老人の言葉をそのまま信用するわけにも行きません。が、どこにも傷らしいものの無いことも事実です。
「昨夜どこかへ出たのでしょうか、後前の事を詳しく聴かして下さい」
平次は一座を見渡しました。そこには少なくとも、十人は居ります。
「昼頃から、湯島の叔母のところへ行きました。あんまり遅いから泊ってくるだろうと思って、気にもせずにいると――今朝この姿で、塀の外に転がっていましたよ」
諦め切れない様子で、老主人はそっと冷たい額にさわりました。
「私も悪かったよ。碁打友達が来て、一局、二局とツイ夢中になって、甥が帰ったのも知らずにいたが――」
そう言うのは、四十前後の立派な武家です。
「貴方様は?」
「馬場要と申す浪人者じゃ」
「あ、馬場猩々斎様で」
「御存じかの、いやはや」
馬場要は場所柄笑いもならず、苦り切りながらも額を叩いております。