Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens
驚いたのは曲者でした。唯の町人の隠居と思ったのが、江戸で一番強かな御用聞、銭形の平次と判ると、背を返してサッと飛んだのです。いや、平次の投げ銭は恐れないにしても、物々しく四方に犇めく気合、いずれは役人の包囲の網が、ここを目当てに絞られるでしょう。
「御用」
曲者の背を見ると、平次は浴びせるように御用の声を掛けました。相手の足を縮ませるには、これほど有効な掛声はありません。
曲者はそれにも関わらず、人間離れのした軽捷さで、路地から路地へ、真一文字に旅籠町の方へ飛びます。
「野郎ッ、逃げるかッ」
その後を追う平次、少し着膨れておりますが、捕物に馴れた足は、さながら宙を飛んでヒタヒタと曲者に迫るのでした。
「御用ッ」
もう一度叱咤した平次の声、それが木精するように、
「御用だぞッ」
昌平坂の方から、ガラッ八の声が応じます。その夜、明神様を中心に、平次と呼応して漁っていたガラッ八が、遠くの方から狩り出して来る、平次の声を聞いて、急に勢い立ったのは無理もありません。
あと十歩、平次の手は曲者の背に及びそうになると、旅籠町の往来から、サッと路地へ曲者の姿は隠れます。