Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠13
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠13 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 349.705 Zeichen · 678 Bildschirme
主膳は、逃げるようにこの場を立去るよりほかに、手段のないことを知りました。
「まあ、お倉婆さんじゃないの?」
中の主は、さすがに、そのままでは済まされない気になったらしく、そわそわと着物を引寄せて起き出ようとする。
「失礼、失礼、座敷を間違えました」
主膳は、これだけの詫び言を捨ぜりふにして、まっしぐらに自分の座敷に来て、夜具をあたまからかぶってしまったが、先方も、ここまで追っかけて来る気遣いはない。さりとてまた、けたたましく人を呼び起して、たった今、この座敷へ怪しい者が入りましたよと、騒ぎ立てる気配もないらしい。多分、先方は、戸惑いをしたそそっかしい客人の仕事だろうと、苦笑いをしていることだろう。こっちもホッと息をついて、我ながらの失敗に、苦笑いが出きらないでいたが、その苦笑いの底から、不意に、
「今のあの声は、あれはお絹ではないか」
勃然としてこういう偶想が起ると、けったいな雲が、むらむらと目口を覆うのを感じました。
九十三
ああ、思い返してみると、今のあの、なまめかしい声の主は、お絹ではなかったか。
どうも、お絹の声らしい。娘の声でもなく、芸妓あたりの調子でもない。