Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠13
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠13 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 349.705 Zeichen · 678 Bildschirme
九十四
夜が明けて、その正体を見届けることは、極めて簡単な仕事でありました。
風呂場に近い洗面所の鏡の前で、その女をつかまえることの無雑作であったように、その正体を見現わすのも、極めて無雑作なもので、
「お絹じゃないか」
「まあ、あなた」
どちらも、その意外であったという心持は同じことで、ただ一方が怒気をふくんで難詰の体なのと、一方が体裁をとりつくろうことに、あわてまいとしている心組みだけが違うらしい。
「どうしてこんなところへ来た」
「それは、あなたこそじゃありませんか」
お絹は、やり返したつもりであるが、主膳は肯かない。
「おれの来るのは勝手だが、こんなところは、お前の来るところじゃない」
「ずいぶん手前勝手ねえ、わたしが来て悪いところなら、あなただって、立寄れないはずじゃありませんか」
「理窟を言うな、いったい、何しに来たのだ」
「何しに来たっていいじゃありませんか、あなたこそ、何しにおいでになりました」
「おれは、気が向いたから来たのだ、お前はこんなところへ来るはずではなかった」
「わたしだって、気が向かない限りはございません……第一、あなたこそ、あれほど約束をなさっておきながら、どうして、異人館へおいでにならなかったのですか」