Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠13

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠13 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 349.705 Zeichen · 678 Bildschirme

Aozora Bunko

ああ、こんな骨灰の中を、千尺掘ったからとても、清水の一滴も湧いて出ようはずはない!

絶望困憊の極みのところに、いずれよりともなく清冷たる鈴の音が聞えました。

これはまさしく、聴覚上の清水でありました。

味覚の上では、いよいよかわいてめぐまれないが、聞く耳の上では清冷きわまる清水、甘露の響。それはまさしくこの谷つづきの峯の上あたりから降り来る物の音です。しかも、見上げたところの四囲の絶壁――曾て白馬の頂で夢に見た弘法大師が、千足の草鞋を用意して、なお登り得なかったという越中の剣山に何十倍すると思われる連脈の上より、何という清冷なる鈴の音だろう。この一つの鈴のみが、天上より落ち来る唯一の物象であり、物心であり、妙音であり、甘露であります。

「たれか来るのだな」

竜之助が、その峯つづきを見上げると、わけて覚円峯のようにすっきりした大巌山の上より、まさしく一箇の物があって動いて来るのを認めました。

その高い峯の上から、絶壁を伝って通して下って来る者、しかもその者によって、この清冷なる物の音が起されていることも疑いありません。

みるみる一点の黒いものが、その灰白の幾千万丈の巌石の間から徐々と下りて来る、人だ!