Japanische Klassiker mit Furigana
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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Lesen Sie みみずのたはこと (みみずのたわこと) von 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 265.437 Zeichen · 530 Bildschirme
月見草も亦心浅からぬ花である。
八九歳の弱い男の子が、ある城下の郊外の家から、川添いの砂道を小一里もある小学校に通う。途中、一方が古来の死刑場、一方が墓地の其中間を通らねばならぬ処があった。死刑場には、不用になった黒く塗った絞台や、今も乞食が住む非人小屋があって、夕方は覚束ない火が小屋にともれ、一方の古墳新墳累々と立並ぶ墓場の砂地には、初夏の頃から沢山月見草が咲いた。日間通る時、彼は毎に赭くうな垂れた昨宵の花の死骸を見た。学校の帰りが晩くなると、彼は薄暗い墓場の石塔や土饅頭の蔭から黄色い眼をあいて彼を覗く花を見た。斯くて月見草は、彼にとって早く死の花であった。
其墓場の一端には、彼が甥の墓もあった。甥と云っても一つ違い、五つ六つの叔父甥は常に共に遊んだ。ある時叔父は筆の軸を甥に与えて、犬の如く啣えて振れと命じた。従順な子は二度三度云わるゝまゝに振った。叔父はまた振れと迫った。甥はもういやだと頭を掉った。憎さげに甥を睨んだ叔父は、其筆の軸で甥の頬をぐっと突いた。甥は声を立てゝ泣いた。其甥は腹膜炎にかゝって、明くる年の正月元日病院で死んだ。屠蘇を祝うて居る席に死のたよりが届いた。