Japanische Klassiker mit Furigana
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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Lesen Sie みみずのたはこと (みみずのたわこと) von 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 265.437 Zeichen · 530 Bildschirme
白
一
白
一
彼の前生は多分犬であった。人間の皮をかぶった今生にも、彼は犬程可愛いものを知らぬ。子供の頃は犬とばかり遊んで、着物は泥まみれになり、裾は喰いさかれ、其様なに着物を汚すならわたしは知らぬと母に叱られても、また走り出ては犬と狂うた。犬の為には好きな甘い物も分けてやり、小犬の鳴き声を聞けばねむたい眼を摩って夜半にも起きて見た。明治十年の西郷戦争に、彼の郷里の熊本は兵戈の中心となったので、家を挙げて田舎に避難したが、オブチと云う飼犬のみは如何しても家を守って去らないので、近所の百姓に頼んで時々食物を与えてもらうことにして本意ない別を告げた。三月程して熊本城の包囲が解け、薩軍は山深く退いたので、欣々と帰って見ると、オブチは彼の家に陣どった薩摩健男に喰われてしまって、頭だけ出入の百姓によって埋葬されて居た。彼の絶望と落胆は際限が無かった。久しぶりに家に還って、何の愉快もなく、飯も喰わずに唯哭いた。南洲の死も八千の子弟の運命も彼には何の交渉もなく、西南役は何よりも彼の大切なオブチをとり去ったものとして彼に記憶されるのであった。
村入して間もなく、ある夜先家主の大工がポインタァ種の小犬を一疋抱いて来た。