Japanische Klassiker mit Furigana
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どようふじん
土曜夫人
織田 作之助
Lesen Sie 土曜夫人 (どようふじん) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 106.903 Zeichen · 213 Bildschirme
三
京吉はそうふざけながら、しかし、表情だけはさすがに固く、パイを取って来ると、くそッと力を入れてその表を撫ぜた。
三
京吉はパイをツモる時に、気合を掛けるようなことはめったにしなかった。が、ここぞという一枚にだけは「くそッ!」と、声に出した。そして、そんな時は、もうどんなパイも思いのままのパイに変えてみせるという魔術使いのようなインスピレーションに憑かれており、狙いはめったに外れなかった。自信がなければ、気合は掛けなかったのだ。追い込んで、抜く自信がある時だけ、ゴール直前で使う名騎手の鞭のような気合であった。
「くそッ! 五万!」しかし、五万でも八万でもなかった。
「なんだ、紅中(ホンチュン)か!」紅中ならカンになっており、リンシャンカイホウ(同じパイが四枚の時、もう一度ツモってそれで上る上り方)のチャンスがある。
一同ははっと固唾を呑んだ。グッドモーニングの銀ちゃんは、煙草の火のついた方を口の中に入れて、火を消してしまった。弁士上りのグッドモーニングの銀ちゃんは、ひとの二倍は唇が分厚かった。
京吉はもう黙って、手の汗を拭くと、すっと手を伸ばして、リンシャンパイを掴んで、ギリギリと掻くようにパイの表を撫ぜた。