Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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どようふじん

土曜夫人

織田 作之助

Lesen Sie 土曜夫人 (どようふじん) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 106.903 Zeichen · 213 Bildschirme

Aozora Bunko

二

「兄ちゃん」

と、声を掛けられた。

二

兄ちゃんと呼ばれて、京吉はびっくりした。自分を兄ちゃんと呼ぶのは、田村のママの娘のチマ子よりほかにはいない筈だが、ちかしチマ子は十日前に家出したきり、行方不明であった。チマ子の父親は大阪の拘置所にいるゆえ、面会や差入れに大阪へ行っているのかも知れないと、京吉は考えていた。

もっとも、昨日、四条通りでチマ子の姿を見かけたいう男もいる。してみれば、やはり京都へ帰って来ているのかと、京吉はひょいと声のする方を見たがチマ子ではなかった。

朝日ビルの前に、靴磨きの道具を出して、うずくまっている十二三の少女が、なつかしそうに京吉を見上げているのだった。

あ、そうだ、ここにも一人自分を兄ちゃんと呼ぶ娘がいたっけ――と、京吉は思い出して、寄って行った。

「なんだ、お前か」

お洒落の京吉は、いつもその娘に靴を磨かせていたのだが、この半月ほどはその場所に姿を見せなかったので、ふしぎに思っていた。

「うん。あたいや。兄ちゃん、あたいまた戻って来ちゃったの。あたいのことよう覚えてくれたはったなア」

娘はうれしそうだった。アクセントは東京弁だが、大阪と京都の訛りがごっちゃにまじって、根無し草のようなこの娘の放浪を、語っているようだった。