Japanische Klassiker mit Furigana
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どようふじん
土曜夫人
織田 作之助
Lesen Sie 土曜夫人 (どようふじん) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 106.903 Zeichen · 213 Bildschirme
走馬燈
一
いわば、彼等はみんな主人公なのだ。十番館のホールで自殺した茉莉ですら主人公だ。しかし、同時にまた、この人物だけがとくに主人公だということは出来ないのだ。
強いていうならば、げんにいま二等車と三等車の間のデッキに立って、章三と向き合っている新しい登場人物が主人公としてこの資格を、最も多く持っているといえるかも知れない。
なぜなら、彼女は世相が変らせた多くの日本人の中で、その変り方の最も鮮やかな女であり、かつての日本には殆んど見られなかった人物であるからだ。
彼女は章三と一瞬にらみ合った。視線が触れ合って火花を散らした――かと思うと、彼女の褐色を帯びたうるんだような瞳が、妖しく笑った。そして、
「あたしに会いたければ、銀座のアルセーヌにいらっしゃい」
という言葉を残すと、三等室の中へすらりと伸びた姿を消してしまった。
章三は洗面所の中へはいると、鏡に顔を写した。青ざめた顔にふっと微笑がうかんだ。
走馬燈
一
四条通りの夜更けの底を雨が敲いていた。
米原の駅の近く、汽車のデッキから突き落されて、ひと知れず死んで行った名も知れぬ男の、土人形のように固くなった屍の上に降り注ぐ同じ雨が、夜更けの京都の町をさまよう哀れな人々の、孤独に濡れた心にも降り注いでいるのだ。