Japanische Klassiker mit Furigana
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どようふじん
土曜夫人
織田 作之助
Lesen Sie 土曜夫人 (どようふじん) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 106.903 Zeichen · 213 Bildschirme
それだけに、陽子の体だけは指一本触れず、そっとして置きたかったのだ。自分の踊りの技巧が相手の女の生理を迷わすことを知っていたから、恋をしながら陽子とは踊ろうともしなかったくらいだのに、いま陽子の触感を求めている。このありきたりの情熱は一体何としたことであろう。
「ねえ、帰ってよ」
「…………」
「帰ってったら! 京ちゃん!」
そんな眼をすると怖いわ――という声はわざと聴かぬふりをして、京吉は窓の外の雨の音を聴いていた。焦躁のような音であった。
その音を陽子も聴いていた。そしてもし京ちゃんが強く出て来たら、自分はもう拒む力もないだろう――と、がっかりしてしまったくらい、その雨は気の遠くなるような孤独の音を、陽子の耳に降らせていた。
しかし、京吉がいきなり陽子を抱き寄せようとすると、
「あ、京ちゃん、待ってよ。あたしはそんな女じゃないわ」
陽子にとって一番大事なものが自尊心であるとすれば、この自尊心を与えているのは、自分は二十四の今日までたった一つ捨てずに来たものがあるという誇りだった。何れは捨てねばならぬものではあろうが、しかし、それをこんな風に簡単に……。