Japanische Klassiker mit Furigana
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どようふじん
土曜夫人
織田 作之助
Lesen Sie 土曜夫人 (どようふじん) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 106.903 Zeichen · 213 Bildschirme
いわば初演奏だ。だからすくなくとも今夜はおかしいくらい熱心だった。しかし、取り戻した調子を張り上げた時は、もう誰も踊っている者はなかった。
ステップをすっと引き寄せてから、その反動でぐっと女の体を押して行く――いわば情熱的にアクセントの強いタンゴの中でも、クンパルシータの曲は誰も踊りたがり、お茶を引いて椅子に「カマボコ」になっているダンサーすら、同じカマボコさんをつかまえて、女同士で踊っていたくらいだが、しかし倒れた茉莉の顔は、余りに青すぎた。
ただごとではない。
「醜態だね。転ぶのはまだ早いや。宵の口じゃないか。不見転ダンサーか。誰なんだい」
ステップを踏みはずして、転んだのか――と皮肉りかけた口の悪い客も、
「あ、茉莉が……」
倒れたのかと気がつくと、あわてて相手のダンサーをはなして、
「――茉莉誰と踊ってたんだい。柔道屋か」
茉莉はまかりまちがっても転ぶような、そんな下手なダンサーではなかったのだ。
「踊りでは茉莉、顔では陽子」
と、十番館では定評になっていた。
「えッ、茉莉が……?」
と、陽子も顔色を――いや、陽子の顔色は既に木崎がシャッターを切った時なぜかはっと変っていた。