Japanische Klassiker mit Furigana
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どようふじん
土曜夫人
織田 作之助
Lesen Sie 土曜夫人 (どようふじん) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 106.903 Zeichen · 213 Bildschirme
七
「へえーん」
京吉は小莫迦にしたような声を出していたが、やはり、陽子何の用事だろうと、胸はさわいでいた。
京吉は陽子の身の上は何にも知らなかった。どこに住んでいるのかも知らなかった。陽子も京吉が田村に居候していることは知らなかった。十番館で一寸口を利くだけのつきあいでしかなかった。
だから、セントルイスへ掛ければ、京吉がつかまると、陽子が知っていることすら、すでに京吉には不思議だった。むろん、これまで電話なぞ掛って来たためしはなかった。
それだけに、意外なよろこびだと、胸が温まりかけたが、しかし、それでやに下るのはだらしがないと、京吉はピシャリと水を掛けた。
「昨日の今日じゃねえか。感じ悪いよ」
夢がこわれたのだ。誰かと踊る時、いつもあごをぐっと引いて、心もち下唇を突き出しながら口を閉じている陽子の癖や、ほんのりと桜色に透けて見える肉の薄い耳から、生え下りへ掛けての、男を知らぬやるせない曲線の弱々しさを、三十男の感覚で思い出すと、なまなましい嫉妬が改めて甦った。
「おれ帰るよ」
「あら、電話きかないの……?」
「おれポン引じゃねえよ」
「ポン引って、何のことなの。