Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠13
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠13 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 349.705 Zeichen · 678 Bildschirme
「ムク!」
この犬が、この頃に至って、自分というものに対する敵意をすっかり取払ってくれたことは、七兵衛にとって驚異でなければならない。
今晩、この犬は忘れられていたのだな。本来ならば、この犬にも今晩の食卓の一席を与えてしかるべきものであった。誰もムクをと言うものもなかったのは、ムクを忘れたのではない、忘れねばこそというわけなんだろう。七兵衛は、今まであけなかった窓を開いて見ると、果して巨大なるムク犬が前面を過ぎて行くのを見ます。窓をあけられた途端にちょっとこっちを振返って挨拶をしたままで、また、のそりのそりと暗いところをあちらへ向けて歩んで行く、その体を見ると、忘れられようとも、忘れられまいとも、この番所の夜を守る責任はかかって我にあるのだ――人を心置きなく楽しませるためには、自分が間断なき警戒を必要とするという忠実なる番犬の心と言うよりは、名将は士卒の眠っている間、自身微行して歩哨の戒厳を試むることあるというにも似ている。
七兵衛はそれを見ると、尊いような気がしました。内で、一切を忘れて清らかな興に耽っている人たちも尊いが、こうして忘れられながら夜を守っている犬も尊い。