Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠13
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠13 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 349.705 Zeichen · 678 Bildschirme
三十三
手は後ろへあのままで、余れる縄でもってグルグル巻きに松の幹へ結び捨てられているのだが、口には別段に轡をはめられているわけでもないのに、眼はどろりとして、口は唖の如く、助けを呼ぶの気力さえないようです。
この分では、夜が明けきって、誰ぞ通りかかりの者の助けを待つことのほか、動きが取れそうもありません。ひょっとすると、舌でも噛み切って事切れているのではないかとも疑われるが、そうでない証拠には、どろりとあいた眼が時々は動いているから、生きていることだけは確かだが、ただこうして夜明けまで置けば凍え死んでしまいはせぬかとのおそれがあるばかりです。
表に斯様な変則門番の出来たことを知るや知らずや、広い屋敷の中の別邸のお部屋を、しどけない寝巻姿で、そうっと抜け出した潰し島田に赤い手がら、こってりしたあだものの粋づくり、どう見てもお屋敷風ではない、がこれは昼の時の姿とは打って変ったお蘭の方の閨の装いでした。
お手水に行くつもりだろうが、途中で戸惑いをして、お手水場とは全く違った方向の廊下を忍びやかに歩いて行くのは、おかしいことです。寝ぼけて戸惑いするほどの年でもなし、実のところ、お蘭さんは手水に行くふりをして、全くはそうではないのです。