Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしゅうこうけつじょう

神州纐纈城

国枝 史郎

Lesen Sie 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 188.242 Zeichen · 380 Bildschirme

Aozora Bunko

第十回

一

「行って鄭重に介抱せい! その高坂甚太郎を!」

「は、それでは絞りへは?」

「指一本触れさせたが最後、汝活かしてはおくまいぞ」

「お助けなさるのでございますか?」

「俺にとっては妻と弟の子だ! 昔あった俺の妻のな」

戸が音もなく閉ざされた。廊下を地下室へ走って行く消魂しい万兵衛の足音が、ちょっとの間部屋へ響いて来たが、それが次第に遠ざかり、やがてすっかり消えた時には、部屋の中には城主の歩く重々しい足の音ばかりが、寂しい反響を立てていた。

明け近い月の白茶けた光りが、戸の隙から射していた。そうして遥かの湖水の岸から、彼に向かって呼びかける声が、尚遠々しく聞こえて来た。

「兄上よ、兄上よ」と。……

「兄上よ、兄上よ」と。……

第十回

一

「申し上げます」

と云いながら、近習の犬丸は手をつかえた。

「うん何んだ! 何か用か?」

「は、ご来客でございます」

「ナニ来客? 何者だ?」

「みすぼらしい老人でございます」

「そんな者には用はない。追っ払ってしまえ、追っ払ってしまえ」

「それがなかなか帰りませんので」

「無礼な奴だ。斬って捨てろ」

「かしこまりましてございます」

「が、待て待て、どんな風態だ?」