Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんしゅうこうけつじょう

神州纐纈城

国枝 史郎

Lesen Sie 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 188.242 Zeichen · 380 Bildschirme

Aozora Bunko

なかば意識が失われていた。

「ここはいったいどこだろう?」考えたが解らなかった。そんなにも茫然しているのであった。

「遠い昔に城を出た。……本栖湖の水城、俺の城、……五年前だったかしら、もっと前だったかしら?」

いやいや彼が城を出たのは、わずか数ヵ月前なのである。桜の花の咲く頃で、そうして今は木芙蓉の花が、白々と咲く夏なのである。

「どうして城を出たのだろう? ああそうだ思い出した、故郷の甲府を訪ねようと、ある闇の晩に城を出た筈だ。……うんそういえば湖水へ出る、真鍮の扉の開いた音が、いまだに耳の底に残っている。ああそうして帆鳴りの音が。……それから甲府へ行ったかしら?」

ここで意識が断ち切れてしまった。

彼は気持ちが悪かった。何かウネウネした虫のようなものが、頭の中を這い廻わっていた。そうして鋭い虫の歯が、コチコチと頭蓋骨を噛み砕いているように思われた。そうして絶えず耳もとで、嗄れた声が囁いていた。

「やっと俺は思い出した、たしかに俺は甲府へ来た。躑躅ヶ崎のお館を、俺はこの眼で見たような気がする。……だがいったいどうしたんだ、俺がソロソロと歩いて行くと、みんな叫びながら逃げて行ったが……」