Japanische Klassiker mit Furigana
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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Lesen Sie みみずのたはこと (みみずのたわこと) von 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 265.437 Zeichen · 530 Bildschirme
朝々其れに清水を湛えて置く。近在を駈け廻って帰ったデカやピンが喘ぎ/\来ては、焦れた舌で大きな音をさせて其水を飲む。雀や四十雀や頬白が時々来ては、あたりを覗って香炉の水にぽちゃ/\行水をやる。時々は家の主も瓜の種なぞ浸して置く。散り松葉が沈み、蟻や螟虫が溺死して居ることもある。尺に五寸の大海に鱗々の波が立ったり、青空や白雲が心長閑に浮いて居る日もある。地蔵様は何時も笑顔で、何時も黙って、何時も合掌してござる。
地蔵様の近くに、若い三本松と相対して、株立ちの若い山もみじがある。春夏は緑、秋は黄と紅の蓋をさし翳す。家の主は此山もみじの蔭に椅子テーブルを置いて、時々読んだり書いたり、而して地蔵様を眺めたりする。彼の父方の叔母は、故郷の真宗の寺の住持の妻になって、つい去年まで生きて居たが、彼は儒教実学の家に育って、仏教には遠かった。唯乳母が居て、地獄、極楽、剣の山、三途の川、賽の河原や地蔵様の話を始終聞かしてくれた。四五歳の彼は身にしみて其話を聞いた。而して子供心にやるせない悲哀を感じた。其様な話を聞いたあとで、つく/″\眺めたうす闇い六畳の煤け障子にさして居る夕日の寂しい/\光を今も時々憶い出す。