Japanische Klassiker mit Furigana
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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Lesen Sie みみずのたはこと (みみずのたわこと) von 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 265.437 Zeichen · 530 Bildschirme
其様な暇も金も無いのである。
甲州街道の新宿出入口は、町幅が狭い上に、馬、車の往来が多いので、時々肥料車が怪我をする。帰りでも晩いと、気が気でなく、無事な顔見るまでは心配でならぬと、村の婆さんが云うた。水の上を憂うる漁師の妻ばかりではない。平和な農村にも斯様な行路難がある。
東京界隈の農家が申合せて一切下肥を汲まぬとなったら、東京は如何様に困るだろう。彼が東京住居をして居た時、ある日隣家の御隠居婆さんが、「一ぱいになってこぼるゝ様になってるものを、せっせと来てくれンじゃ困るじゃないか」と疳癪声で百姓を叱る声を聞いた。其は権高な御後室様の怒声よりも、焦れた子供の頼無げな恨めしげな苦情声であった。大君の御膝下、日本の中枢と威張る東京人も、子供の様に尿屎のあと始末をしてもらうので、田舎の保姆の来ようが遅いと、斯様に困ってじれ給うのである。叱られた百姓は黙って其糞尿を掃除して、それを肥料に穀物蔬菜を作っては、また東京に持って往って東京人を養う。不浄を以て浄を作り、廃物を以て生命を造る。「吾父は農夫なり」と神の愛子は云ったが、実際神は一大農夫で、百姓は其型を無意識にやって居るのである。