Japanische Klassiker mit Furigana
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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Lesen Sie みみずのたはこと (みみずのたわこと) von 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 265.437 Zeichen · 530 Bildschirme
死ぬる前日は、父に負われて屋敷内を廻ってもらって喜んだ。其翌日も父は負って出た。父が唯一房咲いた藤の花を折ってやったら、彼女は枕頭の土瓶に插して眺めて喜んだ。其夜彼女は父を揺り起し、「わたしが快くなったら如何でもして恩報じをするから、今夜は苦艱だから、済まないが阿爺さん起きて居てお呉れ、阿母は赤ん坊や何かでくたびれきって居るから」と云うた。而して翌朝到頭息を引取った。彼女は十六であった。彼女の家は、神道禊教の信徒で、葬式も神道であった。兄の二人、弟の一人と、姉婿が棺側に附いて、最早墓守夫妻が其亡くなった姉をはじめて識った頃の年頃になった彼女の妹が、紫の袴をはいて位牌を持った。六十前後の老衰した神官が拍手を打って、「下田安子の命が千代の住家と云々」と祭詞を読んだ。快くなったら姉の嫁した家へ遊びに行くと云って、彼女は晴衣を拵えてもらって喜んで居たが、到頭其れを着る機会もなかった。棺の上には銘仙の袷が覆うてあった。其棺の小さゝを見た時、十六と云う彼女の本当にまだ小供であったことを思うた。赤土を盛った墓の前には、彼女が常用の膳の上に飯を盛った茶碗、清水を盈たした湯呑なぞならべてあった。