Japanische Klassiker mit Furigana
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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Lesen Sie みみずのたはこと (みみずのたわこと) von 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 265.437 Zeichen · 530 Bildschirme
肺患者には無惨な埃まじりの風が散り残りの桜の花を意地わるく吹きちぎる日の午後、彼は大久保余丁町の綱島家の格子戸をくゞった。梁川先生発熱の虞あり、来訪諸君は長談を用捨されたく云々、と主治医の書いた張札が格子戸に貼ってある。食事中との事で、しばらく薄暗い一室に待たされた。「自彊不息」と主人の嘱によって清人か鮮人かの書いた額が掛って居た。やがて案内されて、硝子戸になって居る縁側伝いに奥まった一室に入った。古い段通を敷いた六畳程の部屋、下を硝子戸の本棚にして金字の書巻のギッシリ詰まった押入を背にして、蒲団の上に座って居る浅黒い人が、丁寧に頭を下げて、吸い込む様なカスレ声で初対面の挨拶をした。処女の様なつゝましさがある。たゞ其の人を見る黒い眸子の澄んで凝然と動かぬ処に、意志の強い其性格が閃めく様に思われた。最初其カスレた声を聞き苦しく思い、斯人に談話を強うるの不躾を気にして居た彼は、何時の間にかつり込まれて、悠々と話込んだ。話半に家の人が来客を報ぜられた。綱島君は名刺を見て、「あゝ丁度よい処だった。御紹介しようと思って居ました」と云う。やがて労働者の風をした人が一青年を連れて入って来た。