Japanische Klassiker mit Furigana
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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Lesen Sie みみずのたはこと (みみずのたわこと) von 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 265.437 Zeichen · 530 Bildschirme
夫婦して一つコップから好きな酒を飲み合い、暫時も離れぬので、一名鴛鴦の称がある。夫婦は農家の出だが、別に耕す可き田畑も有たぬ。自然薯でも、田螺でも、鰌でも、終始他人の山林田畑からとって来ては金に換え、飯に換え、酒に換える。門松すら剪って売ると云う評判がある。村に行わるゝ自然の不文律で、相応な家計を立てゝ居る者が他人の櫟の枝一つ折っても由々敷咎になるが、貧しい者は些やそとのものをとっても、大目に見られる。ムロの鴛鴦夫婦は、此寛典の中に其理想的享楽生活を楽しんで居るのである。
午後到頭雨になった。蛙の声が劣らじと雨に競うてわめく。
夜皆寝て了うたあとで、母屋の段落で二葉亭訳「うき草」を読んだ。此処は引越した年の秋、無理に北側につぎ足した長五畳の板張で、一尺程段落になって居る。勾配がつかぬので、屋根は海鼠板のトタンにし、爪立てば頭が閊える天井を張った。先には食堂にして居たので、此狭い船房の様な棺の中の様な室で、色々の人が余等と食を共にした。今は世に亡き人々の記憶が、少なからず此処に籠って居る。
夜は更けた。余は「うき草」の巻を開けたまゝ、読むともなく、想うともなく、テェブルに凭れて居る。