Japanische Klassiker mit Furigana
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パンドラのはこ
パンドラの匣
Lesen Sie パンドラの匣 (パンドラのはこ) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 192.644 Zeichen · 386 Bildschirme
家も、お父さんが死んで間もなく、牛込のあの大きい家から、いまの此の麹町の家に引越して来たのだ。そうしてお母さんは病気になって、今でも寝ている。でも僕は、お父さんをちっとも憎めない。お父さんは、僕の事を、坊主、坊主と呼んでいた。お父さんに就いての記憶は、あまり残っていない。毎朝、牛乳で顔を洗っていたのだけは、はっきり覚えている。ひどくお洒落な人だったらしい。客間に飾られてある写真を見ても、端正な立派な顔である。姉さんの顔が一ばんお父さんに似ているのだそうだ。僕の姉さんは、気の毒な人である。姉さんは、ことし二十六である。いよいよ、今月の二十八日にお嫁に行くのである。長い間、お母さんの病気の看護と、僕たち弟の世話のために、お嫁に行けなかったのだ。お母さんは、お父さんの死んだ直後に病床に倒れてしまった。脊髄カリエスなのだ。もう十年ちかく寝たきりである。お母さんは、病人のくせに、とても口が達者で、それにわが儘で、看護婦をやとっても、すぐに追いやってしまうのだ。姉さんでなければ、いけないのだ。けれども、ことしのお正月に、兄さんが、びしびしとお母さんに言って、とうとう姉さんの結婚を承諾させてしまったのだ。