Japanische Klassiker mit Furigana
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どようふじん
土曜夫人
織田 作之助
Lesen Sie 土曜夫人 (どようふじん) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 106.903 Zeichen · 213 Bildschirme
ふと、カメラを持っていた木崎のことが、頭をかすめた。陽子の眉は急に翳った。
「えっ……?」
丁度演奏台の傍をすり抜けている時だったので、京吉には聴えなかったらしい。
「聴えなかったらいいわ」
顔を見ずに、陽子は疳高く言った。
「燕だというんだろう……? まさか。ママは丙午だよ。大年増だよ」
と、京吉は二十三歳に似合わぬませた口を利いた。
「いいじゃないの。どうせ年上ならいっそ……」
「二十違っても……? あはは……。まるで怪奇映画だ。おれの趣味じゃないよ」
「どうだか……」
「どうして、そんなにこだわるんだ」
京吉は陽子の顔を覗きこんだ。
凛とした気品に冴え返った、ダンサーにあるまじい仮面のような冷やかな顔が、提灯のピンクの灯りに染められて、ふと臈たけたなまめかしさがあった。
「だって、不潔じゃないの。燕だなんて。もし燕だったら、断然絶交よ」
「じゃ、燕でなかったら、おれを泊めてくれる……?」
京吉はだしぬけにそう言った。
「えっ……?」
商売柄、口説かれることには馴れていたから、口説かれて、腹の立つことはあっても、もはや驚くことだけはしなくなっている筈の陽子だったが、思わず立ちすくんだ。