Japanische Klassiker mit Furigana
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どようふじん
土曜夫人
織田 作之助
Lesen Sie 土曜夫人 (どようふじん) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 106.903 Zeichen · 213 Bildschirme
しかし、財布を拾ったという偶然は、数字のように明確に銀造の迷いを割り切って、チマ子のいる京都までの道のりは、もはや京都行きの省線が出る大阪駅までの十町でしかなかった。
「この金があれば、京都まで行ける!」
と、チマ子への想いをぐっと抱き寄せると、もう追われる不安がガタガタ体をふるわせて、何度も柳の木に突き当り、よろめいた途端、巡査とすれ違った。
しかし、巡査はじろりと見ただけで、通り過ぎた。拘置所の脱走さわぎは十分前の出来ごとであり、その巡査の耳にはまだはいっていなかったのだろう。大量脱走者を出した大阪拘置所が、警察へ報告したのは、一時間たってからであった。
もっとも、青い囚人服を着ていたとすれば、その場は無事に通り過せなかっただろうが、その時銀造はチマ子が差入れてくれた洋服を着ていたのだ。面会に来て、父親の銀造が青い着物を着ているのを見るのが辛く、チマ子は工面して闇市で洋服を買い、守衛にたのんで差入れたのだった。
「チマ子のおかげでたすかった!」
と、ほっとしながら、渡辺橋の方へ折れると、道はぱっと明るく、バラック建ての商店街の灯が銀造の足下を照らした。