Japanische Klassiker mit Furigana
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どようふじん
土曜夫人
織田 作之助
Lesen Sie 土曜夫人 (どようふじん) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 106.903 Zeichen · 213 Bildschirme
いわば章三の情熱は野心以上に自尊心の振幅によって動くのだった。
だから、前後の見境もなく、汽車の中でいきなり貴子を殴ろうとしたのだが、しかし、章三の自尊心はそんな向う見ずを彼に許して置くほど、けちくさい自尊心ではなかったから、二三歩行きかけて、急に立ち停った。
「あの女をいまここで殴れば、おれの自尊心は二重に傷つくのだ」
章三は傷ついたままズキズキと膿み出している自尊心のはけ口のない膿を、持て余したまま、踵をかえすと、三等車との間のドアをあけて、デッキへ出た。そして、デッキのドアをあけて、吹きこむ雨風に打たれて、頭をひやそうとすると、
「ばか野郎!」
デッキにうずくまっていた男が、どなった。
「……? ……」
「雨がはいるじゃねえか。間抜けめ!」
「…………」
章三は血相を変えた。
「閉めろ!」
「…………」
「閉めろといったら閉めろ! つんぼか……?」
男は起ち上って、ドアを閉めようとした。が、章三はドアのハンドルをつかんではなさなかった。
「こいつ!」
男は章三の胸を突いた。胸に溜っていた自尊心の膿ははけ口を求めて、あふれ出た。章三はものもいわず、精一杯の力をこめて、どんと男の胸を突いた。