Japanische Klassiker mit Furigana
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どようふじん
土曜夫人
織田 作之助
Lesen Sie 土曜夫人 (どようふじん) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 106.903 Zeichen · 213 Bildschirme
宿屋で泊ればいい」
「うち、泊るお金あれへん」
そこは藪の中で、蚊が多く、立ち話しているうちに、木崎は神経がいらいらして来たので、いきなり十円札を三枚つかみ出すと、
「じゃ、これをやるから宿屋で泊れ!」
娘の手に渡して、やっぱりただの夜の花だったのか――と、且つはがっかりし、且つはサバサバして、あとも見ずに清閑荘の玄関へはいって行った。
二階の階段を上って掛りの六畳が、木崎の部屋だった。六畳の中二畳ばかり、黒いカーテンで仕切ってこしらえた現像用の暗室へ、カメラを置いて、蚊やり線香に火をつけていると、ドアを敲く音がした。あけると、さっきの娘がしょんぼりと、しかし顔だけはニイッと笑って、立っていた。
「帰らんのか」
「うん」
ペロリと舌を出した――のを見ると、木崎は思わず噴き出しそうになって、もう追いかえせなかった。娘はいそいそとはいると、
「木崎さん、ええ写真機持ったはンねンなア」
部屋の外に掛った木崎の名札をもう見ていたらしい。それには答えず、
「君は大阪だろう」
木崎も大阪人だけに、娘の言葉のなまりがなつかしかった。
「うん。焼けてん」
娘は暗室のカーテンへ素早い視線を送っていた。