Japanische Klassiker mit Furigana
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どようふじん
土曜夫人
織田 作之助
Lesen Sie 土曜夫人 (どようふじん) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 106.903 Zeichen · 213 Bildschirme
嘘の中に軽い嫉妬の実感はあったのだ。もっとも貴子は春隆をそんなに好いているわけでもなかった。真底から男に惚れるには、余りに惚れっぽいのだ。つまり、簡単な浮気の気持――だが、春隆には大した魅力を感じているわけでもなかった。ただ、貴族――それだけかも知れない。貴族も相場は下った。しかし、相場が下ったから、貴子のような女は近づいて行くのだ。パトロンのある女は、こんどは逆に自分より非力の男と浮気したがるものだ。春隆も、貴子の眼にはそれだけ相場が下ったのか、終戦後の輿論だろうが、一つには、げんに金払いがわるい。もっとも、貴子は貴族を軽蔑しているわけではなかった。貴子は自分の名に「貴」の一字があることを、つねにある種の誇りを持って、想い出していたのだ。
章三は鈍感ではなかったから、貴子が春隆の悪口を余りにいいすぎることに気がついた。貴子という女は、めったに客の悪口をいったことがなかった。自分の店へ来る客はいわゆる上客ばかしだというのが、貴子の自慢で、パトロンの章三にはとくにそれを誇張していたくらいだ。
「なんや、こいつ侯爵に気があるのンか」
章三は不機嫌な唇を噛んだまま、鉛のように黙ってしまった。