Japanische Klassiker mit Furigana
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どようふじん
土曜夫人
織田 作之助
Lesen Sie 土曜夫人 (どようふじん) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 106.903 Zeichen · 213 Bildschirme
深夜の町をはだしで歩いていたというだけでも、疑われるのは無理もないと諦めていたが、しかし、警察へ行けばすぐ釈放されるだろうと、楽観もしていた。
それだけに、留置場の狭い穴をくぐった時は、泣けもしない気持だった。身動きも出来ない狭さや、不潔さや、いやな臭気もたまらなかったが、何よりも茉莉のお通夜に行けなくなったことが、情なかった。
それもみな、田村なぞへ行ったからだと、今更の後悔と一緒に、京吉の顔がうかんだ。
「田村はよせ、行くな!」
と、京吉も停めたし、お通夜も気になったし、素姓をかぎつけたのを好餌にして釣ろうという春隆のワナは月並みで俗悪だったから、余りに見えすいてもいた。
ところが、わざわざそのワナの中へ飛び込んで行ったのは、むろん春隆に口止めさせるためであった。
京都でダンサーをしているという秘密が春隆の口から洩れて父の耳にはいれば、強引につれ戻されるおそれはあったし、それに家出生活の辛さを我慢している気持の中には、誰も自分の素姓を知らないというひそかなスリル感があった。新聞の種になってしまっては、もうつまらないし、父の政治的人気に疵がつくという心配もあった。