Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠13
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠13 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 349.705 Zeichen · 678 Bildschirme
むずかる郁太郎を抱きながら、七兵衛は何かひとり思案を定めたようです。
七十六
沢井の道場に、ひとり踏みとどまった与八は、道場のまんなかで、涎掛をかけつつ、坐りこんで無性に泣いていました。
今晩は、全く静かです。
静かなはずです、先代の主人、自分の生命の親たる弾正先生は疾うに世を去り、まさに当代の主人であるべき竜之助殿は、天涯地角、いずれのところにいるか、但しは九泉幽冥の巷にさまようているか、それはわからない――最近になって復興して、竹刀の声に換ゆるに読書の声を以てした道場の賑わいも、明日からは聞えないのです。そうして、お松さんも、郁坊も、登様も、乳母も、あの人間以上と言ってもよい豪犬も、みんな行ってしまったから、今晩というものが、いつもの晩よりも、全く静かなのはあたりまえです。
こんな静かなところで、誰もいないのに、あの図抜けて大きな男が、ちっぽけな涎掛の紐のつぎ足しをして、それを首筋にかけ、大きく坐り込んで、ホロホロ泣き続けているのだから、人が見たら笑いものですけれども、今晩は笑う人さえいない。
幾時かの後、与八は急に飛び上りました。