Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠13
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠13 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 349.705 Zeichen · 678 Bildschirme
伊勢へ行くということは、日本人にとっては罪の懺悔に行くのでもない、道の修練に行くのでもない、一種の包容ゆたかなる遊楽の気分を持って行くのである。そこに日本人が神を慕う特殊の心情と行動とがある。伊勢参りの憧れは、すべての日本人にとって明るい。
けれどもお銀様は、その日本人の普通の人が持つような、軽快な気性を以て育てられてはいませんでした。今し、その憧れの伊勢の国をながめている、というよりは睨んでいるのですが、それは今にはじまったことではありません。お銀様は、いつでも物を見るということはなく、物を睨めることのほかには為し得ない人ですから、当然その眼が伊勢の国へ向いている時は、その心が伊勢の国を怒っている時でなければなりません。だが、お銀様として、何を伊勢の国に向って怒らねばならぬものがありますか。
数日前、宇治山田の米友という代物が、ここと同じところにいて、出て行く船と伊勢の国をながめて衷心から憤っていたはずですが、それには充分に憤るべき理由があり、また憤りに同情すべき充分の事情がありました。いまだ伊勢の国の土を踏んだことのないお銀様には、そういう理由も、事情も、一切無いはずです。