Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠13
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠13 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 349.705 Zeichen · 678 Bildschirme
「心配なさるな、主人は行ってしまいましたよ」
その声が存外若くして、そうしてやさしいのに、立ちすくんだ女の子は息を吹き返さないということはありません。
振返って見ると、最初の印象では雲を突くばかりの大男が手に白刃を提げて迫っていると見たのが、こうして見ると、自分とはいくらも違わないところの、まだ前髪立ちの若い侍で、抜き放されていたと思った白刃は、いつしか鞘に納められて、右の手に軽く提げ、その左の手で、和らかに自分の肩を叩いて言葉をかけたというよりは、慰めを与えられたといってよい程に、物静かなあしらいですから、娘の子は全く生き返った思いでこちらを向いてしまいました。
前にいう通り、神前の燈が朧ろで、はっきりとはわからないのですが、その輪郭と言い、その物ごしと言い、いま受けた印象をいよいよ鮮かにするのみで、微塵も、敵意と危険とを感ぜしめられないものですから、ホッと息をついて、
「どうも、とんだ失礼をいたしてしまいました」
こうなってみると、自分の寝まき姿が恥かしい。
だが、やっぱり神前の薄明りが幸いして、取乱した女の姿を、そう露骨に見せるということはありませんでした。