Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしゅうこうけつじょう
神州纐纈城
国枝 史郎
Lesen Sie 神州纐纈城 (しんしゅうこうけつじょう) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 188.242 Zeichen · 380 Bildschirme
……しかるに今は優婆塞はいない。彼らは牧者を失った。彼らはさまよえる羊となった。四散するのは当然である」
で、彼は自分へ云った。
「さて庄三郎よ、お前はどうする? 俺か、俺は出立しよう。本来の目的へ帰ることにしよう。父母と叔父とを尋ねることにしよう。俺は実際はいい意味において、光明優婆塞に魅せられていたのだ。露骨に云えば誑かされていたのだ。だが今は正気となった。憑物は離れてしまった。ああそれにしても纐纈布は、なんと俺には宿命であったろう」
で、ある日庄三郎は、仕舞い込んで置いた紅巾を、物の間から取り出して、膝の上へ拡げて見た。
天幕の隙間から春の陽が、黄金の征矢を投げかけた。紅巾は燦然と輝いた。底に一抹の黒味を湛え、表面は紅玉のように光っていた。眼の眩むような赤色であり、それが角度の相違によって、青くも見え紫にも見えた。
いまさらながら庄三郎は感嘆せざるを得なかった。
彼は恍惚と見入っていた。これが彼の悪運であった。
一人の僧が通りかかり、何気なく庄三郎の天幕を覗いた。彼の顔色は颯と変った。
彼はそのまま「聖壇」の方へ、大急ぎで帰って行った。
忽ち世にも恐ろしい噂が、耳から耳へと囁かれた。