Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(六)結納の行方
野村 胡堂
Lesen Sie 銭形平次捕物控(六)結納の行方 (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 142.597 Zeichen · 289 Bildschirme
「遺言?」
老用人はちょっと眼を見張りました。
「兄の伊之助が心掛けて果し兼ねましたが、一つ見て頂きたいものがございます。――なアに、つまらない迷子札で、ヘエ」
平次がそう言いながら、懐から取出したのは、真鍮の迷子札が一枚、後閑武兵衛の手の届きそうもないところへ置いて、上眼使いに、そっと見上げるのでした。
色の浅黒い、苦み走った男振りも、わざと狭く着た単衣もすっかり板に付いて、名優の強請場に見るような、一種抜き差しのならぬ凄味さえ加わります。
「それをどうしようと言うのだ」
「へ、へ、へ、この迷子札に書いてある、甲寅四月生れの乙松という倅を引渡して頂きたいんで、ただそれだけの事でございますよ、御用人様」
「…………」
「どんなもんでございましょう」
「しばらく待ってくれ」
拱いた腕をほどくと、後閑武兵衛、深沈たる顔をして奥に引込みました。
待つこと暫時。
どこから槍が来るか、どこから鉄砲が来るか、それは全く不安極まる四半刻(三十分)でしたが、平次は小判形の迷子札と睨めっこをしたまま、大した用心をするでもなく控えております。
「大層待たせたな」
二度目に出て来た時の用人は、何となくニコニコしておりました。