Classiques japonais avec furigana
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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
Lisez 三国志(一) (さんごくし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 309 839 caractères · 622 écrans
と、喚きながら一人が槍でなぐった。槍は正確に、張飛の肩へ当ったが、それは猛虎の髯にふれたも同じで、張飛の酔いをして勃然と遊戯から殺伐へと転向させた。
「やったな」
槍を引ったくると、張飛はそれで、莚の豆幹でも叩くように、まわりの人間を叩き出した。
叩かれた捕吏や兵隊も、はじめて死にもの狂いになり始めた。張飛は、面倒といいながら槍を虚空へ投げた。虚空へ飛んだ槍は、唸りを起したままどこまで飛んで行ったか、なにしろその附近には落ちてこなかった。
鶏の悲鳴以上な叫喚が、一瞬のまに起って、一瞬の間にやんでしまった。
居酒屋のおやじ、居合せた客、それから往来の者や、附近の人たちは皆、家の中や木蔭にひそんで、どうなることかと、息をころしていたが、余りにそこが、急に墓場のような寂寞になったので、そっと首を出して往来をながめると、ああ――と誰も呻いたままで口もきけなかった。
首を払われた死骸、血へどを吐いた死骸、眼のとびだしている死骸などが、惨として、太陽の下にさらされている。
半分は、逃げたのだろう。捕吏も兵隊も、誰もいない。
張飛は?
と見ると、これはまた、悠長なのだ。