Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

Lisez 三国志(一) (さんごくし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 309 839 caractères · 622 écrans

Aozora Bunko

五

老僧は、彼のためらいを、どう解釈したか。

「そうだ、氏素性も知れない婦人をと、疑ぐっておるのじゃろうが、心配するな。このお方は、つい先頃までの、この地方県城を預かっておられた領主のお嬢さまじゃ。黄巾賊の乱入にあって、県城は焼かれ、ご領主は殺され、家来は四散し、ここらの寺院さえ、あの通りに成り果てたが、その乱軍の中から迷うてござったお嬢さまを、実はわしが、ここの塔へそっと匿うて――」

と、老僧の眼がふと、古塔の頂を見上げた時、疎林を渡る秋風の外に、にわかに、人の跫音や馬のいななきが聞えだした。

五

劉備が、眼をくばると、

「いや、動かぬがよい。しばらくは、かえってここに、じっとしていたほうが……」

と、老僧が彼の袖をとらえ、そんな危急の中になお、語りつづけた。

県の城長の娘は、名を芙蓉といい姓は鴻ということ。また、今夜近くの河畔にきて宿陣している県軍は、きっと先に四散した城長の家臣が、残兵を集めて、黄巾賊へ報復を計っているに違いないということ。

だから、芙蓉の身を、そこまで届けてくれさえすれば、後は以前の家来たちが守護してくれる――白馬の背へ二人してのって、抜け道から一気に逃げのびて行くように――と、祷るようにいうのだった。