Classiques japonais avec furigana
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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
Lisez 三国志(一) (さんごくし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 309 839 caractères · 622 écrans
すると後ろのほうで、
――然なり。然なり。
と、誰かいったような気がしたが、振りかえって見たが、人影なども見あたらなかった。
ただ、樹木の蔭に、一宇の古い孔子廟があった。
劉備は、近づいて、廟にぬかずきながら、
「そうだ、孔子、今から七百年前に、魯の国(山東省)に生れて、世の乱れを正し、今に至るまで、こうして人の心に生き、人の魂を救っている。人間の偉大を証拠だてたお方だ。その孔子は文を以て、世に立ったが、わしは武を以て、民を救おう――。今のように黄魔鬼畜の跳梁にまかせている暗黒な世には、文を布く前に、武を以て、地上に平和をたてるしかない」
多感な劉備青年は、あたりに人がいないとのみ思っていたので、孔子廟へ向って、誓いを立てるように、思わず情熱的な声を放って云った。
――と、廟の中で、
「わはははは」
「あははは」
大声で笑った者がある。
びっくりして、劉備がたちかけると、廟の扉を蹴って、突然、豹のように躍りだしてきた男があって、
「こら、待て」
劉備の襟首を抑えた。
同時に、もう一人の大男は、廟の内から劉備の眼の前へと、孔子の木像を蹴とばして、
「ばか野郎、こんな物が貴様ありがたいのか。