Classiques japonais avec furigana
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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
Lisez 三国志(一) (さんごくし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 309 839 caractères · 622 écrans
敵は、さわいで、
「やあ、曹家といったぞ。さては曹操、曹洪の兄弟と見えたり」
「思いがけない大将首、あれを獲らずにあるべきや」
餓狼が餌を争うように二人を蔽いつつんだ。
すると。
彼方の野末から、一陣の黄風をあげて、これへ馳けて来る十騎ほどの武士があった。
ゆうべから主君曹操の行方をさがし歩いていた夏侯惇、夏侯淵の二将の旗下たちだった。
「おうっ、ご主君これにか」
十槍の穂先をそろえて、どっと横から突き崩して来た。
「いざ、疾く」
と曹兄弟に、駒をすすめ、夏侯惇はまっ先に、
「それっ、落ちろっ」と気を揃えて逃げだした。
矢は急霰のように追ったが、徐栄軍はついに追いきれなかった。曹操たちは、一叢の蒼林を見て、ほっと息をついた。見ると五百ばかりの兵馬がそこにいる。
「敵か、味方か?」
物見させてみると、僥倖にも、それは曹操の家臣、曹仁、李典、楽進たちであった。
「おお、君には、ご無事でおいで遊ばしたか」
と、楽進、曹仁らは、主君のすがたを迎えると、天地を拝して歓び合った。
戦は、実に惨憺たる敗北だったが、その悲境の中に、彼らは、もっとも大きな歓びをあげていたのだった。