Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

Leggi 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 350.912 caratteri · 702 schermate

Aozora Bunko

――わ、わ、わんッ

先刻から血腥い風が、黒犬を発狂に近い昂ぶりにさせたのかもしれない。谺が声をよび、声が谺をよび、陰々と、その吠えたけびは、止まなかった。

――と思ううち、遂に、猛犬はその縄を切って、黒い鞠みたいに、女の逃げた方へ素ッ飛んで行ったが、その途中に、よろめきよろめき歩いていた傷負法師は、自分へ噛みついて来たと思ったか、いきなり槍を振りあげて、犬の顔をぶん撲った。

穂先で撲られたので、黒犬の顔が少し切れた。

――きゃんッ!

犬は横へ反れて杉林へ駈けこんだ。それきり、吠える声もせず、影も見えなくなってしまった。

「先生」

伊織は、上から告げた。

「女が逃げてったよ。――女が」

「降りて来い、伊織」

「杉林の向うを、まだもう一人、傷負の坊主が逃げて行く。追いかけないでもいいんですか」

「もうよい」

――伊織がそこを降りて行った頃には、武蔵は、夢想権之助の口から、あらましの次第を聞いていた。

「女が逃げて行ったといいますから――きっと今申した、お甲にちがいありません」

権之助はゆうべ、彼女の茶店の腰掛に眠っており、天佑といおうか、端なくも、彼らのきょうの企み事を、すっかり聞いてしまったので、すぐ、そう察したのであった。