Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

Leggi 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 350.912 caratteri · 702 schermate

Aozora Bunko

八

祖先の恩、君公の恩は、忘れんとしても忘れようもないが、一頃、露命をつないだ馬の沓の恩は忘れそうじゃと、後々、誡め合うて、細川家へお抱えとなった今月の今日を、毎年の寄合い日と決め、こうして藁の莚に、昔をしのび、三つの恩を胸に新たにしながら、貧しい酒もりを、大きく歓びおうている次第でござる」

孫兵衛丞は、そういい足してから、武蔵へ杯を向けて、

「いや、われらのことのみいうて許されい。酒は貧しくも、肴はなくも、心ばえは、かような者ども。――明後日の試合には、どうぞ潔うやって下されよ。骨は、わしらが拾う。ははは」

杯を押しいただいて、

「かたじけのうござる。高楼の美酒にもまさるお杯。お心ばえにあやかりますように」

「滅相もない。われらごときにあやかったら、馬の沓を作らねばならぬぞ」

小石まじりの土が、堤の上から少しばかり、草間を辷ってくずれて来た。人々が振り仰ぐと、ちらと、蝙蝠のような人影がかくれた。

「誰だっ」

木南加賀四郎は、おどり上がって行った。押っとり刀でまた一人つづいた。

堤の上に出て夜霞の遠くを見ていたが、やがて大きく笑いながら、下の武蔵や友達へ向って告げた。