Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

Leggi 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 350.912 caratteri · 702 schermate

Aozora Bunko

八

「意外でございましょう」

「意外だ」

「三峰権現のおひきあわせだと私は思います。また、わたくしに導母の杖を授けてくれた亡き母の導きもあるでしょう」

「……では、母御は」

「亡くなりました」

茫然たるまま、とりとめもなく、語りかけたが、

「そうだ。伊織が?」

と、武蔵の眼はすぐ、彼の姿を探した。すると、権之助は、

「お案じなさいますな。てまえが救って、あそこへ登らせておきました」

と、空を指さした。

伊織は、樹の上から、不審そうに二人をじっと見まもっていたが、その時、杉林の奥で、ワン、ワン! と猛犬の吠えたけびが、谺して来たので、

「おや?」

と、眼を反らした。

八

手をかざして、伊織が、樹の上から、猛犬の吠えている方角をさがすと、ずっと奥の――杉林の断れ目から沢へかかる途中に、わずかな平地があって、そこに一匹の黒犬の影が眼にとまる。

黒犬は、樹に繋がれていた。

そして側にいる、女の袂に噛みついている。

女は必死で、逃げようとしているが黒犬が離さない。

しかし、袂を断って、女は転ぶように草原を駈け出した。

梅軒の加勢に来て、さっき伊織を杉林の中で追い廻した法師が、頭から血を出して、槍を杖に、よろめきながら、女の先に歩いていたが、女は忽ち、傷負坊主を追いこして、麓の方へ、駈け下りて行った。